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2016年11月 3日 (木)

百合子氏の死角②「男ヘンの嫉妬」「女ヘンの嫉妬」

人には「くせ」がある。いわゆる「行動パターン」である。

改めて「女子の本懐」(文春文庫)を読み返すと、百合子氏の「くせ」がよく見えて来る。

2005年の郵政解散前、兵庫6区での百合子氏の劣勢が伝えられた主因は、自衛隊である。
兵庫6区は伊丹駐屯地を抱えているが、自衛隊関係票は小沢一郎氏が押さえていて、それが相手候補の市村氏に流れているとのことだった。
負けることなどありえない、そして実際に負けたことがない彼女の政治キャリアの中で、選挙の当落で多少也とも恐怖を感じていた瞬間があるならばこの時であろう。
「刺客」として転区をし、郵政解散での大勝利の立役者となった百合子氏にとって、その後も自衛隊はどこかでトラウマとなっていたのかも。
そんなことを思わせる記述が「女子の本懐」にも記されている。
2006年、久間防衛大臣の失言辞任で、急遽、女性初の防衛大臣として防衛省に乗込んだ百合子氏がドキュメント調に語る場面だ。

「・・私を乗せた大臣車のセンチュリーが防衛省の敷地内に滑り込むと、右側の小さな台に乗った自衛隊員が渾身の力をこめ、大声で、何やら叫んだ。
「うわう、うわうしっ」
何を言っているか、わからない。
秘書官に聞くと「服務中、異常なし」と言っているという。」
(「女子の本懐」P23)

「うわう、うわうしっ」
その時の声を記憶していること。そしてこの記載。確かに、そう聞こえたのかもしれない。が、その音をそのまま書くかと言ったら、普通は書かないような気がする。ちょっと小馬鹿にした感じが出るから。でも、書く百合子氏。
それだけで、彼女の「引っかかり」が見えてくるようである。

「女子の本懐」には百合子氏の「行動パターン」の原理原則が明らかになっている。

①一日に何度もお召し替え=映像での映り方を逆算する
②むしろ威厳を持ってあたらねば、相手が困る。
(自分でも)内心「エラそーだなあ」と思いながらも、なりきる
③女性の側は肩肘張って望む訳ではない むしろ肩肘張って女性のトップを迎え入れるのは男性側 等々・・

「肩肘張って」彼女を迎え入れた人がいる。守屋武昌次官だ。
が、さすが「防衛省の天皇」とまで言われた男性。
百合子氏の初登庁日は女性自衛官が花束で出迎えるセレモニーを発案、週刊誌のグラビア取材には、大臣のバックに選りすぐりの“イケメン”自衛官を揃えたという。
もちろん狙いは百合子氏に取り入り、異例とも言える5年目に突入した在任期間をさらに延長しての続投を確保することだ。
ところが百合子氏は守屋氏にも、塩崎恭久官房長官にも相談ないまま、守屋氏を退任させ、警察庁出身の西川徹矢官房長を後任とする人事案を進める。
そこからの大バトルは報道された通りだが、国会ではテロ特措法延長の問題もあり、百合子氏は混乱の責任をとって防衛大臣を辞める。
「事務次官の交代を閣議人事検討会議を無視して一部新聞にリークしたうえ、夜中に携帯電話で通告しようとするなど非常識で手順を無視している。こうしたスタンドプレーを放置すると、安倍首相のガバナビリティーに疑問が出かねない」(官邸周辺by夕刊フジ)と
いう流れを受けて、自ら、辞めさせられる前に辞める、という形をとったのだが、その後、2007年には東京地検特捜部が防衛装備費の汚職事件で守屋氏夫妻を逮捕、百合子氏の「正しさ」が追認される形になる。

百合子氏が守屋氏の人事に固執したのは既に東京地検が守屋氏を調べているという情報が届いていたからで、だからこそ、「私は間違っていない」という強気を貫いていけたのである。
しかし、なぜ失敗したのか。
「女ヘンの二文字『嫉妬』を男ヘンに変えてほしい」
そういう百合子氏。男ヘンの嫉妬とは「人事」だということへの認識が甘かった、ということかもしれない。
この「男ヘンの嫉妬」については別途ページを割いて詳しく書きたいが(いらんか?笑)
彼女はその「男ヘンの嫉妬」に屈しざるを得なかった無念を、いずれの時にか必ず「どこか」で仕返しをすることを、防衛大臣退任時の挨拶の中で宣言している。

「最後に、「国防については『I shall return』の気持ちで、これからも頑張っていきたいと思っている」と述べ、退任会見を締めくくった。
「to where(どこに)」ということは言わなかったが・・・」(「女子の本懐」p194)

to where・・・
彼女はさまざまな思いを旨に、東京都知事という「男ヘンの嫉妬」の場所に「戻った」のだ。
百合子氏が、防衛省でも勘づき対峙しようと思っていた汚職他は、今回の場合は豊洲やオリンピックとなる。
過去の失敗の経験を経て、人事等の「切り札」をどう使っていくのか、ちと楽しみである。

という側面がありつつも、
政治家の基本的には「行動パターン」はなかなか変わらないと思っている。
55日で終わった防衛大臣時代における彼女の「決断」や攻め方、引き際をおさらいすることは、都政や、都政に留まらない政治情勢の「今後」を見る上で、重要な情報である。

助かるのは、それを彼女自身が本にして残してくれている、ということだ。

彼女は「記録」することにも執念がある。
つまりは自分の理が正しいと言うことを人に伝えたい、という思いのあり、自分の意に反した人の理不尽な言動についても記憶し、いずれの時には必ず書くと思う。
「ハチのひと刺し」ではないが、女ヘンの「嫉妬」って、こういうことかもしれないよね。

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