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2016年11月 8日 (火)

「サザエさんの東京物語」

憲法24条改正を巡り、「理想はサザエさん一家」と啓発している団体があるそうな。

長谷川町子が「サザエさん」を描いた時代背景と、彼女自身の家族の有り様を知っていれば、サザエさんが現実とは近いようで遠い「ファンタジー」であることを理解するのはそう難しくもない。
これはリテラシーの問題である。
長谷川町子作品を読む解く力が欠如しているのだ。

「サザエ」は愛読していた志賀直哉の小説の御殿女中「小江」(サザエ)から取り、海岸沿いに家があったので散歩の途中で登場人物は全て海に関係するものにした。

戦前、戦中、戦後を駆け抜けた家族は、父や夫が病気、戦争で次々亡くなり、女系一家で生き抜かなければならなかった。(独身だった町子以外は皆、結婚後、若くして夫を亡くしている。父は52歳で病死。鞠子の夫は1週間の結婚生活の後出征、戦死。洋子は二人の娘に恵まれたが、夫はガンのため35歳で急逝する)

町子の3姉妹のうち、末の妹長谷川洋子が書いた「サザエさんの東京物語」はそんな一家の状況を正直に書き記している。

父の死後の母の奮闘、将来を見込まれながらも画家としての筆を折る鞠子。激しい人見知りで自分本位の町子。家族の呪縛に苦しみ60歳を越えて「自立」をし、姉妹とは絶縁する洋子。
母は自らの経験を踏まえ、結婚に頼る生き方をしないように娘を育てたし、「姉妹社」という社名に象徴されるように、彼らは「父」不在の中、逆に女系家族の強みを生かして成功に至る。が、前述のように、そこには「家族の呪縛」が積まれて行く。
それが「家族」の「家族」たる所以なのだが。

「理想の家族」とされるなんて、ありがた迷惑!!

ニヒリストで皮肉屋、自分は意地悪ばあさんが近いと語っていた長谷川町子もそう言って、ため息をついているに違いない。

それでも「サザエさん一家」が理想という方には、あらためて、「サザエさんの東京物語」をご一読することをお勧めする。

*長谷川洋子氏が「ニューヨークの24時間」(千葉敦子著)を出版した人だとは知らなかった!
すごい!!

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