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2019年3月

2019年3月18日 (月)

明石市長選挙が示すもの

いずみふさほ 80795票
北口ひろと 26580票
新町みちよ 7321票

泉房穂前市長の「暴言」問題での辞任を受けて行なわれた明石市長選は、次点にトリプルスコアの差をつけて泉氏の圧勝だった。

なぜここまで差が開いたのか。

もちろんこれまでの市政に対しての圧倒的評価がある。
子育て支援がここまで支持されるとは、ある意味画期的な選挙でもある。

一方で以前にも書いたが、泉氏は過剰キャラ。あけっぴろげで隠し事なし。度々の舌禍問題はその延長線上にあったわけだが、今回注目すべきは泉氏がそうした欠点を越える危機管理能力を持っているということだった。

北口元市長は「敵失」という絶好のチャンスを生かせないばかりか、むしろヒール役を担うことになった。

泉、北口両氏は生まれた時から、いや生まれる前からある種のライバルとして運命つけられていた。
その関係は、双方ともに優秀だからこそ成り立って来たとも言える。

初めての直接対決の結果がこれだけの大差になるとは、昨年末に北口氏が立候補表明した時には、どちらも思っていなかったであろう。

兵庫県議時代に一緒に仕事をした新町みちよ氏も含めて、旧知の3人による今回の明石市長選挙から見えてくるもの、学ぶべきことは多い。

今回の選挙については元衆議院議員で当選同期の宮崎タケシ氏が、
「泉市長はさしたる家柄でもなく地盤もカネもなく、顔もたいしたことない、しかもパワハラ体質で日本中に知れわたっている、一見さえない中年男(失礼!)なわけで、これはもう、政治的手腕が得票に直結した希有な例だと言わざるを得ません。」(宮崎氏のFBより)等と書いていて、なるほどと思う。
ただ、たぶん同じ政治的手腕があっても、今回のような結果にはいたらないのではないかという実感も持つ。
むしろ一見「さえない中年男」だからこそ、「三倍速」と言われる特異な言語能力等の「はみ出す異才」が中和され、市民に受け入れられる土壌を作り、今回は救われたのだと思う。

詳細は別途、書きたい。

2019年3月 4日 (月)

『ボリショイ卒業』〜安倍総理にこそ読んでもらいたい一冊

『ボリショイ卒業』(大前仁著 東洋書店新社)

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ロシア・国立ボリショイ劇場バレエ団に日本人で初めて入団、ソリストとして舞台に立った岩田守弘氏の半生を綴ったノンフィクション。どんなに優秀でも役が与えられるわけではない。「舞台」と「舞台裏」の間に確かに存在する差別や嫉妬、人脈や時には賄賂まがいの政治力が渦巻く世界に翻弄されつつも踊り続ける岩田氏の姿は、大げさに言えば好きでも嫌いでも脱ぐことのできない「日本」という皮膚との外からの、内からの対峙を見せつける。

ボリショイを退団後、岩田氏は東シベリア・ウランウデの劇場で芸術監督を務めることになる。華やかな舞台と比べれば、「都落ち」と評価されよう。
このウランウデの劇場は日本人シベリア抑留者たちの力によって建設された劇場でもあった。
いつ母国に帰れるとも知れない絶望の中で天を見上げて、生きる希望=星をつかもうとうる抑留者たちと岩田氏の姿は重なる。

さて、偶然で驚きだったのは、最近仕事上理不尽なことが続いて落ち込みがちの私は岩田氏の踊りをyoutubeで見て励まされていた。岩田氏の素晴らしさを自分の中に留めておくことができず、子どもや友人に熱く語ってもいた。すると、毎日新聞書評欄に拙著が紹介された記事の下に「ボリショイ卒業」、岩田氏の名前を見つけて本当にびっくりした。このタイミング、こんな偶然があるとは。

そう書いたら作者の大前さんからご連絡が。「実は・・」と、さらに浅からぬ縁を聞かされ驚く。
私も、大前さんも天を見上げて、同じ星を見ていたのだ!!

話は少々ずれるが、
現在公開中の「フロントランナー」で、ロシア外交の専門家ゲイリー・ハート上院議員(当時)がワシントンポストの若い記者に、ロシア政治を理解するためにはトルストイを読むべきだと、愛読書を渡すシーンがある。(渡したのは『戦争と平和』だろうが、そこには『アンナ・カレーニナ』も隠喩されている)
なるほど。加えて言えば、バレエ芸術=文化こそもロシアを知るために最も効果的なものなのかもしれないと本を読んでつくづく感じる。

「ボリショイ卒業」はロシア外交に難儀する安倍晋三総理にこそ、読んでもらいたい一冊である。

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