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2019年3月 4日 (月)

『ボリショイ卒業』〜安倍総理にこそ読んでもらいたい一冊

『ボリショイ卒業』(大前仁著 東洋書店新社)

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ロシア・国立ボリショイ劇場バレエ団に日本人で初めて入団、ソリストとして舞台に立った岩田守弘氏の半生を綴ったノンフィクション。どんなに優秀でも役が与えられるわけではない。「舞台」と「舞台裏」の間に確かに存在する差別や嫉妬、人脈や時には賄賂まがいの政治力が渦巻く世界に翻弄されつつも踊り続ける岩田氏の姿は、大げさに言えば好きでも嫌いでも脱ぐことのできない「日本」という皮膚との外からの、内からの対峙を見せつける。

ボリショイを退団後、岩田氏は東シベリア・ウランウデの劇場で芸術監督を務めることになる。華やかな舞台と比べれば、「都落ち」と評価されよう。
このウランウデの劇場は日本人シベリア抑留者たちの力によって建設された劇場でもあった。
いつ母国に帰れるとも知れない絶望の中で天を見上げて、生きる希望=星をつかもうとうる抑留者たちと岩田氏の姿は重なる。

さて、偶然で驚きだったのは、最近仕事上理不尽なことが続いて落ち込みがちの私は岩田氏の踊りをyoutubeで見て励まされていた。岩田氏の素晴らしさを自分の中に留めておくことができず、子どもや友人に熱く語ってもいた。すると、毎日新聞書評欄に拙著が紹介された記事の下に「ボリショイ卒業」、岩田氏の名前を見つけて本当にびっくりした。このタイミング、こんな偶然があるとは。

そう書いたら作者の大前さんからご連絡が。「実は・・」と、さらに浅からぬ縁を聞かされ驚く。
私も、大前さんも天を見上げて、同じ星を見ていたのだ!!

話は少々ずれるが、
現在公開中の「フロントランナー」で、ロシア外交の専門家ゲイリー・ハート上院議員(当時)がワシントンポストの若い記者に、ロシア政治を理解するためにはトルストイを読むべきだと、愛読書を渡すシーンがある。(渡したのは『戦争と平和』だろうが、そこには『アンナ・カレーニナ』も隠喩されている)
なるほど。加えて言えば、バレエ芸術=文化こそもロシアを知るために最も効果的なものなのかもしれないと本を読んでつくづく感じる。

「ボリショイ卒業」はロシア外交に難儀する安倍晋三総理にこそ、読んでもらいたい一冊である。

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